コラム

「テレビとネットの争い」 コーホート分析的コメント

NHK国民生活時間調査の2020年結果が発表され、「若者のテレビ離れ」を煽る向きが多い。
マスコミによると若者はあらゆるものから離れていっていることになってしまい、どこへ行こうとしてるかは不明のままである。
このデータからは、若者は、テレビとネットに同時並行的近づいている様子が伺える。
ネット動画、中でもYoutubeの「行為者割合」増加が背景にあると考えられ、たしかにテレビにとっては業界全体の一大事である。
このデータから読み取れることは、

  • 10代前半は小学生なので、まだ親からネット接続機器を与えられていない子供が多い。
  • 親のスマホや家族のPCなどを親の管理下で使っている姿が想像できる。(さすがにテレビ禁止の家庭は極めて少ないだろう)
  • 「お母さんといっしょ」が幼児の動画接触の最初だった過去から、親のスマホをいじって子守された世代が10代になりつつある。
  • ネット禁制が外れる10代後半ではネット行為が20ポイントも伸び、テレビ行為の1.7倍にもなる。
  • 一方、10代前半に比べテレビ行為が9ポイント下がっていることから、ネットとテレビの競合関係が想定できる。
  • ただ、ネットに比べ低いとはいえ、47%もの人がテレビを見ているので、近い将来、テレビが消える事態は想定できない。
  • この10代後半の突出はコーホート効果となって全体のネット行為率を今後数十年にわたって押し上げるであろう。
  • 40代以降70代はテレビ優位になる。この「加齢効果」は弱いと想定できる。
  • 現在の10代、20代が40代になってもテレビ優位にはならないであろう。
  • 50代以降、49→34→20%とネット行為率は極端に低下する。
  • これは、しかるべき年齢(時代)にネットに接触しなかった集団のコーホート効果と考えられる。

このデータではわからないが、時代効果はネット優位と考えられ、現在のネット・テレビ比率が逆転するようにトレンドは続く。
このトレンドのマーケティング的課題は動画広告の効果測定である。
テレビが持つ「ながら視聴」というターゲットがぼやけた広告効果(潜在ターゲットにも到達できる)と検索という「意思・共感」を前提とするネット動画広告の効果(深いが狭い=ニッチ)の2つを精度高く測定する方法を考えるべきである。

2021.6

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