コラム
今週の話題:α世代・触覚優位・随伴性
スマホ子守からスマホ小宇宙の創造
『α世代がやってくる!!』が1月16日に出版され、α世代サキドリプロジェクトの最初の成果となった。
この執筆過程で、α世代とスマホの深い関係に気づいた。
ひとつは「スマホ子守」による言語を習得する前のタッチスクリーンネイティブ。
二つ目がスマホ子守での視聴動画がショート動画であることから、ショート動画ネイティブ。
この幼児体験から、自分専用のスマホを手に入れた年齢での、スマホ小宇宙の創造。
「スマホ子守」→「ショート動画ネイティブ」→「スマホ小宇宙」は線形でつながっている。
この3つがコーホート効果となって、α世代の特徴となるとの仮説を持つに至っている。
外界認知と感覚器
5億4200万年から5億3000年万前にカンブリア爆発と言われる生物の多様性爆発的にできあがった。
爆発と言っても1000万年以上にわたる進化のプロセスである。
このカンブリア爆発と「眼の誕生」は、ほぼ同時だったと言われている。
カンブリア紀以前の生物は全て水中に生息し、泳ぐもの(魚類)はおらず、海底、湖底を這いまわる視覚(眼)のない生物だったと言われている。
なんといっても5億年前の話だから化石以外のエビデンスはないのだが、捕食者は存在していなかったようである。
この時代の動物は嗅覚と触覚を使って外界を捉えていた。水の中を流れてくる匂い物質(化学
物質)で環境変化や他者の存在を知覚・認識していた。
この時代はまだ、捕食・被食、つまり食うかか食われるかの関係はなかったと言われ、狩と逃走に有効な視覚(眼)は発達・進化していなかった。捕まえるため、逃げるために視覚が発達したと言われ、眼を獲得してからは環境の認知のためには、主に目が使われれ、視覚系の神経組織が進化発達した。
我々の生活を考えても嗅覚・触覚は対象の物体との距離があるときは使いずらいし、この感覚器では相手の細かい、早い動きにも追従できない弱点があることがわかる。
さらに文明化が進むほど外界・環境を把握するための感覚器として視聴優位、聴覚補助のセットの進化が進んだ。
触覚の特性
視覚は眼、聴覚は耳、嗅覚は鼻、味覚は口腔に感覚器特異意的に配置されているのに、触覚は体表面全体に感覚器が配置されている。表皮に近いところにメルケル細胞、マイスナー小体が、深いところにパチニ小体、ルフィニ終末があって、触る、触れる、押す・握る、振動、引っ張りなどの皮膚感覚を識別している。
皮膚からの触覚刺激は脳に伝わり、脳の体性感覚野と言われる領域で認知している。
有名なホムンクルスの小人図を見ると手と口が異常に大きく描かれており、手と口の触覚が優れているという我々の印象
と一致している。
体性感覚としての触覚は身体を環境から浮かび上がらせる、つまり、アイデンティティの確立に深く関わっている。
環境から浮かび上がる自己という実体を視覚で確認しようとすると、自己の鏡像か他人の姿の観察からの想定のいずれかに頼ることになる。それが触覚では全身に感覚受容細胞が配置されているので、身体全体の現在地が身体全体で
知覚されることになる。風呂に入れば目をつむっていても自分の身体が周囲のお湯を押しのけて存在することが実感できる。
この触覚による体性感覚に欠陥がある心を病むことになる。
このように触覚は原始的というか根源的アイデンティティのよりどころを提供している。
α世代の触覚体験
他の生物と同じ人の赤ちゃんんも生まれてすぐに目が見えるようになるが、大人のように視野広くピントが合った見え方ではないらしい。そのせいだけではないが、赤ちゃんは手で触ったり、口に入れてみたりして外界を知覚・確認しようとする。
鏡やテレビ画面に映るものを実在するものとして、触ったり、口に入れたりする赤ちゃんはかわいいものである。
この行動は成長とともに自然消滅するのに両親や祖父母は「不衛生」と言ってやめさせようとする。
赤ちゃんは目や触覚で確認作業している時はおとなしい。そのために両親は好きなおもちゃを与えるが、赤ちゃんそれぞれに好みがあるので万能のおもちゃはない。ここで、テレビを見せておくとおとなしくしていると昭和の母親たちは気づいた。
ここでも赤ちゃんはテレビ画面に触ってみるが、何を触っても冷たいガラス面で実態はつかめない。いくら触っても関係なく
画面は画像と音を送り出し続ける。赤ちゃんにとってみれば自分の働きかけが全て無視されたことになりストレスフルである。
一方、スマホ子守でスマホにを渡された赤ちゃんは、スクリーンにタッチすれば、それに応じて画面が変わり、出て来る音、音楽も変わるのである。この触ることで対象が変化する、画面をこすると、それにつれて変化が起こる、という初めての触覚
体験は赤ちゃんにとって画期的なものであり、スマホ操作にのめりこむ。だから、おとなしい。
このタッチパネルにさわって操作することはタッチパネルが持つ随伴性機能によっている。
例えばテレビのリモコンを操作する場合は随伴性はほとんどなく、リモコンのボタンに触りながらズラしても機能しない、指を
離して、改めて別のボタンを押す必要がある。
リモコン操作も触覚による操作だが、リモコンには「こする」触覚は無効で「押す」触覚が必要なのである。
スマホ子守の触覚体験はコーホート効果として残るか
スマホ子守を初めて体験したのはα世代である。子育て中の母親にスマホが浸透したのは2011年前後であり、瞬く間に100%近い普及率になった。詳しい調査はしていないが、ぐずる、ぐずりそうな赤ちゃんにスマホを与えると一定時間夢中
になってくれるという体験は母親にとって強烈なものである。
赤ちゃんにとっても随伴性を伴ったタッチ:接触がコントロール性を持つ体験は意識しないが感覚記憶に残る。
固い・やわらかい、熱い・冷たい、なめらか・ザラザラ、などの触覚表現とは別にコントロール性を持つ触覚体験は意識下の体験としてコーホート効果として長く残ると想定しているが、検証の方法はいまのところない。

2026.1

