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今週の話題:リエゾンインタビューはn=2分析:n=2は対幻想

"10年くらい前からだろうか、n=1分析の有効性が言われ、実例も多く出て来るようになった。
" たったひとりの分析が一般性を持つわけがないという統計理論からの非難は完全に無視である。
一方、我々は10年くらい前にリエゾンインタビューを開発した。リエゾンの対象者は2人(n=2)である。
<神は細部に宿り給う、もしくはフラクタル構造>
n=1分析の正統性を保証しようという理論はない。実施してみて「使える」ことがわかったから使い続けるということである。
理論的ではないが正統性を象徴する言葉がある。それが、「神は細部に宿り給う」である。
もとは芸術、建築の世界でと言われることで、どんなに末端の、取るに足りない細部にも神の意思は実現している。
細部をよく観察すれば、細部を超えてその全体像がわかると解釈されている。
だから、細部(n=1)を掘り下げることで世界(全体)が理解できるということになる。
さらに市場や消費者意識はフラクタル構造であるとの仮説につながる。
フラクタルとは自己相似形と言われ、「図形の全体をいくつかの部分に分解していった時に全体と同じ形が再現されていく」構造のことをいう。
細部である個人の購買行動や消費心理の構造を解明すれば、それを消費者行動・心理の全体像が解明できると考えられるのである。
<インタビューは幻想を解明すること>
インタビューは現実の対象者に対面するが、聞き出せるのは対象が持つ「幻想」である。
行動観察なら対象者の「現実」を観察できる。インタビューでは対象者の過去の現実の記憶を聞くことになる。
1on1インタビューなら対象者個人が持つ幻想を聞くことに等しい。
リエゾンインタビューは2人を対象にするので対幻想を聞く作業と言える。
さらにFGIになれば、共同幻想を聞き出す作業と発展させられる。(吉本隆明「共同幻想論」)
対幻想は、個人幻想がある相手との関係性に触れた時に生まれる。この対幻想がテーマになるのはネクサスインタビューにおいてである。
夫婦で家を建てる、旅行を企画する場合などには夫婦2人を対象にしたインタビューが企画され、実施される。
ということは、対幻想は相手との関係性の中で個人幻想とは別に立ち現れてくるものと考えられているのである。
この対幻想は夫婦などの親密な関係性が長く続いた結果として生まれてくるが、見ず知らずの他人同士が対面して話をするなかでも 生まれてくると仮定してリエゾンインタビューを考え直す。
関係の薄い(他人同士)2人がリエゾンインタビューで話し合ううちに個人幻想とは別に対幻想が立ち上がる、立ち上がらせることが できればリエゾンインタビューの情報量が格段に上がることになる。
n=1分析と同じようにn=2分析としてリエゾンインタビューを再構築できるわけである。
2024年4月3日のアウラセミナーでこれを試みたがうまくいかなかった(失敗した)。
性・年齢や気に入っている商品が同じというくらいの共通性・関係性だけでは対幻想は生まれなかった。
今後は同級生や職場同僚などある程度の関係性が構築できている2人を対象にリエゾンインタビューを実施し、対幻想を成立させる 研究をしていきたい。

 

 

2024.4

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