コラム

神学論争Ⅷ(意識調査)

久しぶりに「リサーチの神学論争」です。
記憶が正しければ今回で8回目になる神学論争のテーマは「意識調査」
意識調査の反対は決して無意識調査ではなく「実態調査」と言われるのが普通のようです。
消費の実態調査とは特定の商品・サービスが「いつ、どこで、いくつ、いくらで、(誰に)」買われたかをカウント(数値で表す)する調査です。(神学論争としては、これは購買の実態調査であって、消費の実態ではないというツッコミがありそうです)
意識調査はマーケティングリサーチでは「消費者意識調査」が普通です。
消費者意識というコトバは企画書の背景・目的のところで「当該製品ジャンルの消費者意識を明らかにし、今回の新製品の市場性を探る」などと普通に使われます。

ここからが神学論争。
神学論争といっても「意識」とは何か?意識を持つのはヒトだけか?意識はどこにあるのか?
などの哲学的な問題はここでは避けておきます。
ただ、脳科学の実験でおもしろい結果がでています。
通常、意識と行動を分けたとき、何か行動を起こそうという意識(意志)が発生して、その意識が神経を活性化させて筋肉や骨を動かすと考えるのが自然です。
ところが、実験では「我々は意識(前頭葉の活性化)する前に体を動かして(運動野の活性化)いる」という結果がでているそうです。
ある行動(自由意志行動)を起こすときの脳の活動を観測したら、運動野の活性化が前頭葉(運動野に指令を出す)よりも有意に早い(200ミリ秒)という実験結果だったそうです。
確かに、我々は歩くとき、「今、左足を前にだしたから、足裏が大地を踏みしめる瞬間に右足を前方に動かし始めよう」などと意識することはありません。
スポーツなどでも一連の運動は意識の関わりはなく身体(運動野)が勝手に動くように練習・鍛錬を積み重ねます。
知っていて邪魔になることはないが、理屈・理論(=意識)だけではスポーツは上達しません。

それはさておき、マーケティングリサーチが意識調査というときは

  • ブランドやメーカーに対する認知とイメージ(印象、評価)
  • ブランドや製品に関する好悪の感情
  • ブランドや製品に関する購入意向

などを調査することをさしているようです。
上記の「ブランド・メーカー・製品」を「政党、内閣、総理、大臣、政策など」に入れ替えれば「世論調査」と言われるリサーチになります。
過去・現在の消費者意識が将来の消費者行動に「指令」(影響)を与えるという前提で我々は意識調査を実施しているはずですが、先の脳科学の実験結果をみると「行動」が先に発生しているかも知れません。

2009,1

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