コラム

SDI調査の先見性

SDI調査といっても知ってる人は少ないと思います。
㈱インテージ(社会調査研究所)の最初のパネル調査としてスタートした日本のリサーチの「草分け」といえる調査です。

インテージはもうひとつ有名なパネル調査を持っていて、それはSCIと呼ばれています。
SDIは「ストアオーディット」といわれる小売店(薬局・薬店)の仕入・在庫調査です。
SCIは、消費者に買い物をスキャニングしてもらうことでデータ収集する買物行動調査です。
SDIとSCIを比較すると売上、利益、将来性の全てでSCIの勝利といえるのではないでしょうか。
小売店調査はPOSレジと店舗のチェーン化によって、その役割を終えつつあります。
ただ、このSDI調査の歴史を考えると「リサーチとは何か」を考えるあるヒントが得られます。

このSDI調査は当初はリサーチを目的としていなかったものです。
コンセプトというか、事業目的はOTC市場の改革でした。
製薬メーカー、卸、小売店のヒエラルキーを崩して小売店主導、最終的には消費者のための薬局・薬店作りを目指していたといえます。
そのために、独自の流通を組織化し、受発注システムに投資していました。
トラック買い、運転手を雇い、週1回以上の配送を保証し、各メーカー・問屋でバラバラだった受発注を一元化できるシステム開発(当時はVANと言っていた)まで行っていたのです。
時代に先行しすぎたせいか、このOTC市場の改革という新事業は行き詰ります。
そして、SDI調査だけが生き残ったのです。(このあたりの事情はしっかり確かめてはいませんが)
SDIはリサーチとして企画されたのではなく新規事業の中に組み込まれてスタートしたわけです。

日本のマーケティングリサーチは、世論調査から始まったといわれていますが、SDI調査から始まったと考えると違ったリサーチの姿が見えてきます。
リサーチは単独で取り出してもそれほど面白い仕事ではありません。
それをSDIのように新しいビジネスモデルの開発の中に組み込んで考えると非常におもしろい仕事になります。
簡単ではありませんが、単純なリサーチもこういった視点で捉えなおすとワクワクしてきます。

2010,5

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