コラム

変化盲とコンセプト

変化盲、選択盲は最近知った知識です。
ヒトの認知機能のいい加減さを証明する脳科学(認知心理学)の成果らしいのですが、実際に追試をするのは我々の仕事ではないので、リサーチの視点で実験しました。

宿帳に記入している間にホテルのフロント係が男性から女性に入れ替わってもほとんどの人は気づかない。
写真を並べて「好みの男性(女性)」を選んでもらって、瞬間的に入れ替えても入れ替えた写真についてその魅力をとうとうと述べる人がほとんどである。
前者が変化盲、後者が選択盲で、もちろん、実験では後で、「入れ替わったんですが、気づきましたか?」と確認しているそうです。
変化盲、選択盲は最近の脳科学関係の本に多く出てくるので「信用」してもいいのではないかと思っています。
こういった事実があることをリサーチの現場で考えると一対比較など比較評価させる手法にどれほどの信頼性があるのかということになります。
そこで、第12回アウラセミナーで簡単な実験をしてみました。(n=3ですから実験とも言えませんが)

テーマは、「選択盲はコンセプトシートのような言語表現でも起こるのか」です。
実験は、

文章表現だけのコンセプを2案と3案、2つの商品ジャンルで作成しました。
インタビューの前半で「好きな、買ってみたい」コンセプトを選んでもらいます。
シートをいったんしまって、しばらくコンセプトと直接関係のない話題のインタビューを続けます。
そして、「さっき、選んだのはコレです。これの良い点をもう少し詳しく話して下さい。」と先ほど選んだものとは違うコンセプトシートを提示します。

というプロセスでした。

1on1インタビューで、対象者は通常通りのリクルーティングでリクルートしました。
結果は、

  1. 提示したとたん、「私が選んだのはこれではありません。この部分が違います。」と反応した。
  2. 違うとは言わなかったが、後で確かめると「違うのわかったが、まっ、いっか。」と反応
  3. わからなかったし、確認しても気づかなかった。(ただ、この時はモデレーター自身が選択盲 だった可能性があります。つまり、間違えて提示した。)

というものでした。
ここからの結論は、

言語表現では選択盲は起こらない(起こりずらい)
言語は論理的なのでビジュアルよりも識別がはっきりする。(ブローカ野の論理性?)
選択が「いい加減」だと混乱するが、これを選択盲とは呼べない(3の事例)

という内容になりそうです。
fMRIなど大がかりな装置を使わなくても、ニューロマーケティング(リサーチ)の視点での実験はできそうなので今後もテーマを選んで続けていきたいと考えています。

2010,2

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