コラム

nexusインタビュー

モデレーションを始めたころ、以下のような図式を時々みかけた。
図-1のモデレーションは、質問モレはないがグループダイナミックスが働かない。
図-2のような対話こそ、めざすべきモデレーションであると言われた気がする。

前回記事の「モデレーション3.0」でいえば、図-1はモデレーション1.0であり、図-2がモデレーション2.0に近い。
モデレーション3.0まで行かないが、2.5くらいの印象でnexusインタビューを考えたい。

図-1、2のネットワークはグループインタビュー出席者の中で完結している。
モデレーターは出席した対象者の認知、イメージ、評価、行動、を聞き出すことで市場、ブランド、消費者の分析(理解)をめざす。
ここでは、対象者は「自立した」消費者個人であることが前提になっている。
だから、リクルーティングでは「(購買)ブランド(意志)決定者」という条件がつくことが多い。
自立した消費者(変な表現だが)の集団だからこそ図-1の場合でも有効な知見が得られるし、図-2のような会話のネットワークが形成されれば、ひとつのミニマーケットが形成され、新たな発見に結びつく。
こういった前提でグループインタビューを繰り返しているとある疑問に突き当ることが多い。
「ほんとにこの対象者は自分で意思決定したのか(自立しているのか)」という疑問だが、次の2つに分類できる。

①住宅(マンション)自家用車などファミリーで使う商品ジャンルの場合
②対象者が他から強い影響を受けている場合

①の場合は「ファミリーネクサスインタビュー」と称して、ハウスメーカーでは昔から行われている。
具体的には、世帯主(通常は意志決定者)と奥さんを別々にインタビューし、その後、2人のペアーインタビューを行う。
最終的には、子供、祖父母までをインタビューして家族の関係性ネットワークを分析する。
(これに訪問インタビューを加えれば、エスノグラフィーに近くなる)
②の場合も対象が幼稚園児くらいなら、「パパ(ママ)、先生がそう言っていたの?」と切り返すことで解決する。
幼稚園児、小学校低学年の場合は保護者とペアで出席させるのであまり問題にならない。

問題なのは、きちんとした大人の消費者でありながら「この発言は本人のものではない」と思える時である。
当初は、リクルーティングを疑ったり、消費者はバカだ、などと意味もない罵倒を口にしていたが、よく考えれば(考えなくても)「自立した消費者(消費者)」などはこちらの勝手な思い込みに過ぎない。
幼稚園で他のおかあさんに「おいしい」と言われれば買う気になるし、グルメと言われる人も食べログのクチコミ評価でレストランを選ぶし、レストラン(料理)の評価も影響されている。
消費者を自立した個人としてだけでなく、社会的なネットワークのノードとしてインタビュー、分析する必要がある と考えなおした。
従来もマスコミ、クチコミなどの情報接触状況を自己紹介のときに聞いてはいたが、おざなりであった。

今、考えているnexusインタビューを図式化すると次のようになる。

対象者B、CもAと似てはいるが違ったネットワークも持ち、そのnexus(つながり、きずな)の中で消費行動している。
この消費者が持つネットワークの分析から消費者理解を深めようと考えている。
では、どうやってモデレーションしていくか、が難しいのだが。
ネットワークそのものの分析からのアプローチが主流であろうが、あえて消費者側から行ってみたい。

2010,10

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