コラム

ダンバー数、ネットワークリンク数、対象者人数

ダンバー数というとほとんどの人は、150人を想起するだろう。
幅はあるが、150人程度ならお互い顔見知りで、現在の社会関係を維持できるとされる人数である。
猟採集民の集団規模からローマ帝国の軍隊、16世紀のスペイン、20世紀のソ連の中隊まで、この150人前後の人数で構成されている。
これを超えると自然状態での社会関係が維持できなくなり、集団が分裂したり、抑圧的な権力が必要になる。
ただ、ダンバーたちは150を超えて500、1500まで広がることを証明している。
ダンバー数の最小は5で、最も強い関係性を持つ人数はどこでも5人であるとした。
 「深刻な感情的、金銭的困窮に瀕した時に個人的な援助を求める人は?」の質問に回答から導いていることを始めて知った。
通常は親子や配偶者があげられるが、非常に親しい友人やパートナーの場合もある。
次の集団人数が、15~20人で、大家族や友人、親密な関係の人たちである。
さらに40~50人の集団は、親せきなど血族や仲間と呼ばれる人たちで、その先に150人の部族や知り合いがある。
5の3倍数で広がっている同心円を作っている。
また、ダンバーは『ことばの起源ー猿の毛づくろい、人のゴシップ』の中で「全員が聞き、話す会話集団の大きさは4人」が限界」と書いている。
何故、4人、5人なのかは、脳のサイズと相関するという仮説をダンバーは提案しているが、仮説に終わっているらしい。

ネットワークの考え方で人と人の関係を考えると、2人(2つのノード)を結びつけるリンクは1本である。
これは直感的に分かる。 3人ではリンクの数は3本で1人増えただけでリンクは3倍になる。
この関係を一般化すると、集団人数から1を引いた数と集団数をかけた数がリンク数になるが、お互いのリンクがダブってカウント(あなたと私の リンクと私とあなたのリンクは対称)されるので2で割れば、その集団のリンク数になる。
3人までは見たので、4人で見ると4×3÷2で6本となる。5人は5×4÷2で10本、6人で15本、と増えていく。

ここでダンバー数とネットワークの可能リンク数の関係を考えるとダンバー数5の時は考慮すべきリンク(関係性)が10本である。
6人だと15本のリンクを考慮しないといけない。7人では21本に増えてしまう。
強い親密関係を持つ人数は5人(ダンバー数)でその時のリンク数は10本で人の認知機能(脳の容量)から考えてもここにひとつの壁がある。
人数が10人になれば関係性が弱くなるのは当然である。 強い関係性を維持できる集団数は5人である。

我々が日常的に実施するグループインタビューもグループメンバーの関係性を強くモデレートしたほうが成功確率が高い。
そういった集団数は5人が限界で、モデレーターを含めてFGIは5人、対象者4人が最適規模となる。
モデレーターは対象者4人とモデレーターとの4本のリンクはもちろん、対象者同士の6本のリンク(6本)も観察、コントロールする必要がある。
さらに、「全員が聞き、話す会話集団の大きさは4人」であるから、モデレーターは聞き役に徹するべきとの教訓が出てくる。
対象者人数の最適数を、モデレーター体験、心理学のマジカルナンバー4、視覚性ワーキングメモリー容量は4などを根拠にして、対象者人数は4人 とし、ドタキャン対策で5人リクルーティングを提案してきたが、ダンバー数とネットワークのリンク数からも我々の主張は裏付けられたと言える。

 

2021.3

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