コラム

グループインタビューのリ・デザイン

「グループインタビュー」から『アクティブインタビュー』へ、あるいはグループインタビューのアクティブ化ということを今後の目標にしたい。
その過程で、グループインタビューという方法論を再活性化できればと考えている。
『アクティブ・インタビュー』という本が2004年に出版されていて、それは読んでいた。
印象に残ったのは、インタビューの対象者は「回答の容器」を持ってインタビューに臨み、質問に対してその中から適当(正解)と思われるものを選び出してくれると考えるのが従来の考え方。
アクティブ・インタビューでは、対象者を「相互行為」の相手と考え、相互の対話の中から「新しい意味の生成」を得ようとする。
対象者を「回答する人」から、新しい意味生成のための「協働者」ととらえるのである。

一方、長いことグループインタビューをやってきてやっと気づいたことがある。
対象者を心身両面で、もっとアクティブにしてあげれば、この「協働者」とすることができるということである。
まず、カラダをアクティブに。
通常、グループインタビューでは対象者の席は2時間固定されている。
発言録を記録しやすくするため、モデレーターや観察者は発言を「位置情報」として記憶するため、などの理由によるものだろうが、これが対象者のアクティビティを相当阻害していることに気づいた。

  • 立ち上がってもいいですよ。動き回ってもいいですよ。

と促すだけで、動いた後はインタビューそのものが活性化することがある。(全く動かない場合もある!)
このことに気づいて、途中で体操みたいなこと(伸びとか)をやらせるのをみたことがあるが、これは集団を活性化させる力は弱く、個人個人をリラックスさせるだけであるようだ。

  • AさんとDさんは同じチームとしてこの作業をしてください。

と席の離れた対象者同志をペアにして体(手だけでも)を動かす作業をやらせるのも効果的である。
その時に自然に席替えが行われるともっと効果的である。
対象者にとっても「見える世界」が違って見えるのである。 これに関連して、

  • インタビュー終了後、一番気になった対象者の席にモデレーターが座ってみる

というのも時に効果的である。
その対象者が見ていた(見えていた)位置からインタビューを振り返る。(参与観察の一歩手前)
以上、カラダをアクティブにさせることで意識もアクティブになってくれる。
究極というか、最終的には対象者をフリーアドレスにして、椅子も机も取っ払うということになるだろうが、これはこれで、かえってストレスを高める危険もありそうである。

次がココロをアクティブに。
これは、『アクティブ・インタビュー』が言うように対象者を「回答者」の立場から解放し、「協働者」として扱うことに尽きる。

  • インタビュー会場受付での本人確認、使用ブランド確認は簡単にする。(あるいはやらない)

身分証の提示や使用ブランドの再確認が強いと、どうしても尋問に近くなって、対象者が「身構える」ことになる。
この態度でインタビューに臨むと「こんなことしゃべっていいのかと」自己規制的になる。
Webでのリクルーティングが盛んになってからのようだが、そろそろ不必要と言えるくらいWebのリクルーティングも安定してきたのではないか。
こんなことさせておいて「今日は、盛り上がらなかったな」と批判されても困るのだ。

  • プロービングは間接的に、あるいは時間差を使って行う。

直接的プロービングとは、対象者の発言に「何故、そう思う?」「どうして?」とたたみかえるようなプローブである。
何の理由を聞かれているかはっきりわかる利点はあるが、尋問調になって委縮させる危険も大きい。
尋問調ではなく、発言に対して、対象者が自分でストーリーを作れるようにプローブする必要がある。
発言の「背景」や「状況」を思い起こさせ、発言の理由を対象者自らに気づかせるよう後押しするプローブである。
対象者は「回答」を用意して来ているわけではないので、発言の「意味を」作り上げる作業をしてもらう。
もちろん、ウソのストーリーも作ってしまうので気を付ける。

初対面の人は互いに「どこから来た?仕事は何?」と質問し合うことでラポールが形成される。
一方的に質問される側、回答する側に置かれると下位に置かれた印象になる。(力関係の順序でできてしまう)
これをなくすには「他己紹介」が有効である。

今後、我々はアクティブインタビューを目指したい。

2013,12

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