コラム

アンカリングという現象

POSデータの濫用(?)によるコンビニエンスストアからの過剰な新製品要求によってメーカーのマーケティング機能、特に新製品開発が疲弊してきているとの指摘があります。
(詳しくは、富澤豊著『カスタマイズの法則』日本実業出版社 190p~195pを参照)
コンビニ側が現在のようなPOSデータの使い方(週販○個以下なら即、棚から外す)をしている限り新しいロングセラーは生まれにくいでしょう。
新製品の販売個数の時系列は、教科書にある製品ライフサイクルのグラフのようなものではありません。
週単位なら、ジグザグの動きをするし、一度、ダウントレンドを描いた売り上げが再び上昇するという現象はしばしばみられます。
こういったトレンドはメーカーには意味が理解できますが、その日、その日の売り上げ額だけに関心が強いコンビニ側は、「売れなくなった新製品は当店の売り上げ目標にマイナス」との理解しかありません。

ここで問題になるのが、一度ダウントレンドに入った新製品も復活してロングセラーになる可能性の「兆し」をどのように発見するかというリサーチの視点です。
実験店舗で実験してみる方法はありますが、費用の問題とその費用を誰が負担するか(流通?メーカー?)、さらにデータの精度をどう保証するか(たまたま実験に使った新製品の現象かもしれない)などの問題で、定量的に把握することは困難なようです。

アウラに依頼がくるテーマで販売が落ち込んだ製品の「落ち込んだ原因と対策」があります。
このテーマの背後には、「この製品が復活する(再び売れる)ことをコンビニに説得する材料が欲しい」というメーカーの強い気持ちがあります。
今までの経験から、新製品復活(=定着)の「兆し」としてつぎのような傾向が発見出来ました。

① その製品の購入・使用が「経験」にまでなっている。(記憶<体験<経験)
② 初対面に何らかの「感動・発見」がある。
③ メーカーの意図を越えた(想定外)特徴認知がある。
④ プロトコルが明確である。
⑤ アイトラッキングのベスト5には入る(少なくとも圏外にならない)

この5つがグループインタビューで確認できれば、その新製品はロングセラーになる可能性が高いといえます。
とりあえず、この現象を「新製品のアンカリング」と名付けておきます。
アンカリングは「参照点問題」、それからくる「フレーミング効果」を扱う、認知科学や行動経済学のコトバのようです。
ここでは、もっと語源に近い意味でのアンカリングと考えます。
新製品がアンカリングされたと判断できたら、後は週販の数値を予測し、そのデータでコンビニ側と交渉となるダンドリです。(アンカリングされても週販の数値がコンビニ側の要求を満たさなけば、ジ・エンド)

上記の分析にプロトコル分析が有効です。(特に④、⑤)
プロトコル分析とアイトラッキング(簡易的)合わせた方法を採用します。
*方法についてはアウラにお問い合わせ下さい。

2009,1

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