コラム

「平成男子図鑑」

深澤真紀という人の著作で、日経ビジネスオンラインで連載されたものだそうです。
サブタイトルが「リスぺクト男子としらふ男子」、腰巻きの惹句が、あなたの横にもきっといる「イマドキの男子」の世界にようこそ!となっています。
よくある若者の類型論といえばいえますが、新しいやりかたをしています。
勝ち組・負け組、○金・○ビ、血液型のように画然と分類せずに、注目した世代の中にある傾向をいくつもの「○○男子」というネーミングで抽出するという方法です。
クラスター分析のように大きな集団をいくつかの特性でセグメントするのではなく、「平成男子」という集団の特徴を記述的にいくつも羅列しています。
そのせいか、この種の本に多い図式やイラストが少ない印象です。
(あとがきに「描くのが難しかった。」とイラストレーターの発言がありましたが、○○男子と△△男子のイメージが重なり合い、錯綜しているからだと思います。)

ある集団をいくつかにセグメントし、各セグメントの特徴を記述するという方法は、我々、マーケティングリサーチャーが分析・報告の作業過程でよく使います。
その時、集団を分類、区分することに力点を置きすぎて、セグメント別のプロファイルを無理やり記述する羽目になり、わずかな差違を大きく取り上げる失敗をおかします。
この本の著者は、ペルソナをいくつも作って、平成男子という集団の特徴を重層的に描こうとしていて、それが見事に成功しています。
プロファイルを描く=ペルソナを作る、ことに集中して、平成男子をセグメントすることには関心がないように見えます。
あとがきに、多くの「男子世代」「おやじ世代」との取材や会話のなかから本書は生まれた。とありますから、まさにインタビューのまとめ、定性調査の分析結果として見ることが出来ます。
我々の分析・報告の方法論として参考になりそうです。

2007,9

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