コラム

「眼の誕生」

サブタイトルが「カンブリア紀大進化の謎を解く」です。
カンブリア紀の大爆発は、5億4300万年前だそうです。
生物進化のビッグバンで、全ての動物の外部形態がいっせいに進化したことをさします。
種の多様性が一挙に進んだのです。
大爆発というと一瞬のように思いますが、カンブリア紀大爆発は500万年続いたそうです。
500万年の間、生物に急激な進化(多様性)をもたらしたのは「淘汰圧」の高まりであり、その原因は「光」にあるというのが著者の主張です。
カンブリア紀大爆発の原因は、諸説あるらしいのですが、この「光スイッチ」説が最も説得力があるようです。
では、何故この時期に光スイッチがONになったのか(太陽は地球誕生の時から輝いていた)は著者も納得できる答えを用意できていないようです。
それはともかく、光を感知できるようになったことで、生存できる状況(環境)のニッチを発見できるようになり一挙に「淘汰圧」が高まったわけです。
光を感知する、つまり「眼」を獲得することで、捕食者は獲物までの正確な距離がわかります。一方の被食者は、擬態や保護色などを使うことができるし、敵の動きもわかります。

カンブリア紀大爆発によって地球上の生物はその外部形態に際だった多様性を獲得しました。
外部形態の多様性は「淘汰圧」の高まりの中でニッチを探すことで達成されています。
今はやりの「ロングテール」です。
多様性とはロングテールのことであり、ロングテールを切ってしまっては全体としての「豊かさ」は失われるといえます。
さらに、ある生物は自分がロングテールにいるか上位2割にいるかはわからないし、同時に2ケ所に存在することも不可能です。
生物と企業はちがいますが、Web2.0がロングテールを持ち上げ過ぎるのが気になります。
ITとインターネットが「情報爆発」をもたらしたのは事実です。
インタ-ネットが、カンブリア紀大爆発の「光スイッチ」と同じような構造と働きをしているのかWeb2.0に関する言説を聞いていてもよくわかりません。
カンブリア紀大爆発が化石の研究によっているように、Web2.0も未来から現在を見通してみないとわからないのかもしれません。
この本にもあるように、動物分類の基本である「門」は現在38あり、そのうちの35程度は前カンブリア紀から存在していたそうです。

2006,6

ページのトップへ