コラム

カルフール撤退と買(快)物

少し前になりますが、カルフールが日本市場から撤退し、中国を中心に他のアジア諸国に集中するという記事がありました。同時に世界最大・最強のスーパーマーケット、ウォルマートの苦戦も記事になって、日本の消費者、流通システムの特殊性が解説されていました。
日本の消費者(の消費行動)の特殊性を簡単に言うと「EDLPを受け入れない。」ということになります。ウォルマートの世界的な勝利と日本での苦戦をみると確かに日本の消費者は「特殊」かもしれませんが、我々からすれば、EDLPを簡単に受け入れる他国の消費者の方が特殊に見えます。
 *EDLP(EveryDay LowPrice)を簡単に言うと、「特売」をしない。だから、チラシもない。でも、いつも安い。
我々は、毎日のように消費者にインタビューしていますが、残念ながら、日本の消費者しかしりません。
そこで、外国の流通業(カルフール1号店)が日本でとった戦略と日本の消費者の反応から「特殊性」を類推してみます。

カルフール1号店は、幕張でしたが、開店当時の幕張店の特徴をランダムにあげてみます

  1. 広い店舗。店員はローラースケートで移動(もちろん、全員ではありません)
  2. 大きなカートで雑貨も食品もいっぺんに買える。(ワンストップショッピング。店は平屋?)
  3. 天井まで単品を陳列し、ボリュームと安さを強調
  4. 果物など生鮮品も単品大量陳列(トマトが赤い山のように陳列されていた)
  5. レジでの袋詰めは店側がやってくれる。

もっとあったかもしれませんが、思い出せるのはこれくらいです。
そして、消費者の反応・評価は、

  1. 広すぎて、まとまりがない。広い通路が無駄なスペースに見える
  2. 洗剤、サンダルとお刺身を一緒のカートに投げ入れるのに抵抗が強い。
    (日用品と食品でフロアもレジも分離している日本のスーパーがよい。)
  3. 天井までの陳列は圧迫感がある。単品陳列は品揃えの弱さ、悪さにつながって魅力ない。
  4. 小分けしてくれていないと買いにくい。自分でやるのはめんどう。(山を崩したらタイヘン)
  5. 2と同じ理由で、自分でやりたい。それより、レジに並ぶ時間が苦痛。

といった内容でした。

いろいろなミスマッチがありましたが、今、考えるとカルフールは「不便で義務的な買い物を便利に楽しくしてあげる」というコンセプトだったように思えます。
それに対して、日本の(幕張の)消費者は、「すでに買い物は便利で楽しいから、それ以上の便利さ、楽しさ。」を期待していたのではないでしょうか。
「せっかくフランスを期待して行ったのにフランスらしいのは、チーズとワイン売り場だけだった。」という発言に代表されるミスマッチが、これはマネジメントの問題ですが、最後まで改善されなかったのではないでしょうか。(我々は、初期の分析にしか参加していませんので、その後は知りません。)

日本の消費者(主婦)は買い物を楽しいと思っていると考えないと、どんな合理的なシステムを持ち込んでもそれだけでは成功はおぼつきません。
日常の買い物が楽しいから、ほぼ毎日のようにスーパーに行く主婦が多いのではないでしょうか。日本でも女性(主婦)の職場進出と自家用車の所有率の高まりから、欧米型の1週間分のまとめ買い、計画買いが増えるとの説がありますが、郊外型ワンストップショッピングのSCだけでなく、駅前スーパーの営業時間の延長などで「毎日買物(EveryDay ShopPing=EDSP?)」を実現させている日本の流通業の方に分があるのは当然かもしれません。

価格でも、EDLPと日替わり特売では楽しさが全然違ってきます。
消費者は企業の仕入れ担当とは違って、仕入れコストをグロスでは考えていません。
だから、10円安いたまごを求めて119円のガソリン代を使ってしまうのです。

2005,3

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