コラム

再現性問題とマーケティングリサーチ

心理学や行動経済学の著名な論文の追試で「再現性なし、弱い」という結果が多く問題になっているようである。
カーネマンのファスト&スローさえも再現性が弱いとされているようである。再現性は論文と同じ設計の追試で検証する方法と、それらの追試総合的に分析する「メタアナリシス」という方法が使われる。今回はアイエンガー『選択の科学』にある有名なジャム実験の再現性を考える。

<ジャム実験は営業中のスーパーの店員になりすまして「試食コーナー」を設けて行った>


陳列商品数(選択肢の数)は多い(24種)より、少ない(6種)方が、消費者はストレスなく選択できるので売上が増える。 さらにこの結果をうけて、P&Gがふけ取りシャンプーの種類を減らして陳列し、売り上げを伸ばした例が本に出ている。

<50件の追試のメタアナリシスの結果、選択肢の数は買い物客の満足度や購入に「事実上ゼロ」の影響しかないと結論。> 『RCT大全』p214

我々は、選択肢が多いと意思決定に至るプレッシャー、迷いが大きく「買わない」に流れる危険が大きいとの仮説にこだわり過ぎだと考える。
実験の設計と交絡要因をほとんど無視した(と思われる)分析態度に問題があると考えられる
 ・試食コーナーとジャムの陳列棚(購入場所)は離れてる(ブランド選択の現場は6種と24種でコントロールされてない?)
 ・習慣的選択を避けるため。イチゴなどのポピュラーな種類は試食から外したらしい(24種類の中にはキワモノ的な種類が多かったのでは?)
 ・6種、12種、24種の3タイプで実験してみたらどういう結果になったか気になる。

2021.11

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